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『裏道のマドンナ』
女性向け。
終戦直後、悲しい思いを抱きながらも強く生きた女性の話。
上記画像はサムネとして使用可能です。加工も可。
あなたは、私の項(うなじ)の輪郭をなぞるように指を這わせると、
背中のファスナーをゆっくりと下げる。
裂けるように開いた柔らかな布は、音もなく床へ落ちた。
時計の音が耳障りに響く。
覆いを失った肌が、冷たい空気を感じ始めた。
「酷いでしょう?」
疼き出すのは背中を覆う火傷の痕(あと)。
あの日の温度が、肌を焼く温度が…戻ってくるようだ。
「気が済んだ?」
あなたの息が徐々に荒くなる。
「これはあなたが焼いた背中よ?あなた達が無慈悲に焼いたの。」
私の背中を、私の家族を、私の町を、私の愛するものを
「あなた達は焼いたのよ。美味しく焼けているかどうか、確かめてくださる?
日本女はあなたの国の女とは味が違うでしょうね。」
ほら、見て?
ちゃあんとその目に焼き付けるのよ。
✼おわり✼
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