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ピンクの泡

『おねえさんの本命』

#二人用 #バレンタイン #ショタ #少年

登場人物  

・魅惑のJKおねえさん(十七歳)…学校の先輩に片思い  

・小学生ムツキくん(十一歳)…年上女子に一方的な片思い

【場面:朝 自宅前】  

おねえさん:2月14日の朝、私の心は父が見ていた大河ドラマの、戦場に向かう武士と同じだった。昨日作ったガトーショコラ、先輩に受け取ってもらえるかな。込み上げる緊張と不安が玄関のドアを重くする。  

ムツキ少年「おはようございます!」  

おねえさん「おはよう」  

おねえさん:朝いつもここを通る小学生のムツキ君と挨拶を交わすのは、毎日の日課だった。  

ムツキ少年 「おねえさん、なんだかいつもと違うね。どこか具合悪いの?大丈夫?」  

おねえさん「え、大丈夫だよ!」  

ムツキ少年「そう?(見つめる)」  

おねえさん「…ほら、学校に遅れちゃうよ」  

ムツキ少年「わ!やべっ!それじゃ!またね!おねえさんも行ってらっしゃい!…うわ(こけそうになる)」  

おねえさん「危ない!…ふふ(笑ってしまう)」  

おねえさん:緊張が少し和らいだ気がした。心配、されちゃった。そんなつらそうな顔してたかなぁ。  

おねえさん:沢山気持ちを込めたもん、きっと大丈夫!先輩、彼女はいないって言ってたし、いつも目が合うと声掛けてくれるし、いつも励ましてくれるし、いつも笑いかけてくれるし。脈なしではない…はず。  

おねえさん「絶対、上手くいく!」  

 

【場面:夕方 家の近くの道端】  

おねえさん「はぁ~、上手くいくって思ったのにな」  

おねえさんガトーショコラはその出番を失ってしまった。渡そうと先輩のもとへ行くと、そこには女子の先輩と二人で楽しそうにチョコレートを食べている姿があった。私に向けるのとは違う笑顔。確認しなくてもわかる。先輩、あの人のことが好きだったんだ。  

おねえさん:手作り、なんて重いものはあの場では渡せなかった。買ってきたものなら義理です~って渡せたかもしれないけど。  

おねえさん「頑張って、作ったんだけどな(涙声)美味しくできたのに…食べて、ほしかったよ…」  

 

ムツキ少年「あ おねえさん!…おねえ、さん?」  

おねえさん「げ」  

ムツキ少年「何?!どうしたの?もしかしてお腹痛いの?」(鞄をお腹付近で抑えていたのでそう思った)  

おねえさん「ち、ちがうよ!これは…そうだ、これ!良かったらもらってくれないかな?」 

ムツキ少年「え いいの?」  

おねえさん「うん。これね、とても美味しいんだよ!ガトーショコラっていうの。」  

ムツキ少年「…これって、本命チョコレートじゃないの?」  

おねえさん「え、ちが…ちがうよ!これは友チョコ!たくさん作ったからムツキ君にも!」 

おねえさん:押し付けるのは良くないかもしれない。だけど、私は今すぐにこの気持ちの塊を手放したかった。伝えられなかった思いも、もしかしたらって期待も全部この中にこもっていて、今はもう、持っているだけで苦しい。  

ムツキ少年「やった…おねえさんの本命チョコもーらい」  

おねえさん「え、だから友チョコだってば!」  

ムツキ少年「手作りだよね。言ってたよ。お母さんもお姉ちゃんも、手作りチョコは”本命の証”なんだって。こんなに手が込んでるお菓子作っちゃうなんて、そんなに好きだったの?」  

おねえさん「でも最近は友達にも手作りチョコ渡すから…」  

ムツキ少年「うれしいな!僕もおねえさんのこと、大好き!僕たち、両思いだね!」  

おねえさん「え?!違うよ、違うんだよムツキ君!」  

おねえさん:勘違いされている!これはとても良くない状況だ。返して、もらう?でも…  

ムツキ少年「大事に食べるね!」  

おねえさん:この笑顔から取り上げるなんて無粋な真似、私にはできない。  

おねえさん「ムツキ君、あのね…」  

ムツキ少年「うちのお父さんとお母さんも六つ年が離れてるんだ。僕、すぐ大きくなるよ。おねえさんの身長なんてすぐに越しちゃう。そうだよね、今すぐは”世間体”もあるしね。ちゃんと、僕が大人になるまで待っててよね」  

おねえさん:最近の子どもって、みんなこうませているのだろうか。 

…少しだけ、待ってみようかな。 

 

/// おしまい ///  

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