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『オズの向こう』

希望を持ったのも束の間、という酷いお話。

虹と聞けば、それは“陽気”の象徴のようですが、いつまでも見えるわけじゃないんですよね。だからこそ見られたときは嬉しいんですけど。​

今日もたくさん怒られて、落ち込んで 

下を向きながら歩いていた。 

すると地面が急に明るくなったんだ。 

僕はキラキラ反射するひかりが眩しくて 

思わず顔をあげた。 

 

そしたらね、虹が少しだけ建物の間にあったんだ。 

くっきりとした7色に、しばらく目を奪われた。 

明日は晴れるのかなぁ。 

僕は再び歩き出した。 

 

雨に濡れていた木々の葉は、光を反射してキラキラ輝いている。 

白い猫が目の前を横切って、一瞬目が合った。 

青い瞳はまるで、その中に青空を閉じ込めたかのようだった。 

 

ポストに手紙が届いていた。 

送り主は懐かしい友だち。 

結婚式の招待状だった。 

お相手は、僕がよく知るあの人。 

 

虹はいつの間にか消えていた。 

太陽が隠れたからだ。 

 

虹の向こうを夢見たのはいつまでだったかな。 

あの虹は渡れないんだってわかったのはいつだっけ。 

 

ルビィの靴は僕には履けない。 

あの日には帰れない。 

 

✼✼✼おわり✼✼✼ 

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