『 恋バナの境目 』
-
二人用台本(先輩と後輩の掛け合い、性別不問)
-
死神派遣会社「死の扉」の社員。つまり二人は死神。回収に行った魂の話をしている。
-
後輩ちゃんは先輩さんに淡く好意を寄せている。
-
上記画像をサムネイルとして使用可能。
(とある更衣室)
A:(疲れた様子で入ってくる)お疲れ様でぇす。
B:お疲れ様。あれ?遅番だったよね、今帰り?
A:そうなんですよ~。案件が長引いちゃって。
B:そっかぁ、大変だったね。納得してくれなかったんだ。
A:早く終わるはずだったんですよ。だって派遣先は樹海だったので。
ほら、あそこってそういう所じゃないですか?
B:そうだね。私も何度か行ってるけど、ごねる人は殆どいなかったなぁ。
あそこで終わる人はほとんど、諦めがついた人達だもんね。
A:ですよねぇ、私もてっきりそうだと思って。
早く終わるぞーって張り切って行ったんですけど…はぁ。
B:家族の事が気になって…とか?
A:それならまだ可愛げがありますよね。
B:じゃあ、怨恨、か。
A:はい。自分の事を裏切った人達を呪いたい…っていう。そんなの不毛でしかないのに。
B:死後の行いも、来世の選別に関わるからね。その点、説明してあげたの?
A:しましたよ~。後のことなんてどうでもいいって、とにかく恨みを晴らしたいって…。
B:うわぁ…その人、一体何があったの?
A:友達に彼氏をとられたそうです。
B:え、そんな事?
A:添い遂げる約束までしていたのに、って。まぁ、可哀想だとは思いますけど。
死ぬ程の事とは思えませんよね。
B:苦しみは人それぞれだけど…その人、まだ若いんでしょ?
A:87歳の方でした
B:ぶっ…は、はちじゅうなな?!相手は?
A:67歳…だったかなぁ
B:お元気だねぇ…。
A:お元気でしたよ。近年よく言われてますけど、年齢なんて関係ないって事なんでしょうね。
B:そうだね。
A:その人、ずっと独身だったんですよね。
しかも、誰かとお付き合いするのは初めてだったんだそうです。
B:えぇえーーー!そんな事って、あるの?だって87歳でしょ?
A:ご自身の性癖をずっと隠してきたそうですよ。生涯独身を貫くつもりでいたそうです。
B:性癖?
A:同性じゃないと愛せない人だったんです。
B:あー…なるほど。時代、だね。もっと遅く産まれていれば…。
A:はい。「やっと堂々と恋愛を出来るようになった」って。
B:そっかーーー、切ない。切ないね、それは。
…人を人として愛せる時代になったんだもんね。性別も、年齢も…家柄も越えて。
A:人間達は恋愛事情も進歩してるんですよね。
B:そうだね。どんどん自由になってる気がする。顔が見えなくても恋に堕ちちゃうらしいしね。
A:えーーーないない!顔面は重要でしょ?顔面から入るでしょ?普通!
B:上っ面だけじゃなく、中身をみようとしてるって事だよ。それって素敵じゃん?
A:…そ、そうですよね。…それって、私にも見込みがあるって事ですよね!
B:君は十分可愛いよ
A:え
B:さー、仕事仕事~。お疲れ様!気をつけて帰ってね。
A:せ、先輩!勘違いしちゃいますよそれ!
B:ご自由に~。(更衣室を出る)
・・・おしまい・・・