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『 鳥 観 』
気流にのって上昇する。
眼下の景色はぐんぐん小さくなる。
人も、木も、建物も。
その形を捉えるのが困難になる位見えなくなっていく。
「私は今まであそこにいたのだ。」
青い星とはよく言ったものだ。
眼下に広がるのは底知れない青黒い海。
地上を照らす光があるはずの、
しかし見上げた先には黒い宇宙。
上も下も果てには闇が広がっている。
「お前はどこにいく?」
遠く、遠く、どこまでも遠くへ。
行くのではない、逃げるのだ。
「だがご覧、お前がいたあの世界の小さいこと、小さいこと。」
見えないくらい小さな世界、
踏めば潰れそうな蟻のようではないか。
「あんなちいぽけなものにお前は怯えていたのか。」
あんな小さな世界で背中を丸めていたのか。
果てに広がる闇はわたしの中にもある。
そこから光を見つめるのだろう。
ならば今、飛び立とうではないか。
✼✼✼おわり✼✼✼
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