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城の壁

『 美しき貴方を思う 』

  • 二人用台本(BL、R18、青年×中年、中年受)

  • 若干の濡れ場あり。喘ぎ禁止、呻きは可。

  • ​作者の趣味全開。

◆◇◆登場人物◆◇◆

①エルダス(10~20代の青年。王国騎士。幼い頃からミードが大好き)

②ミード(40~50代男性。王国騎士団長。エルダスの父の友人)

③ハイデル(10~20代の青年。エルダスの兄。武具職人。最後にちょろっと出てくる。)

 


 

【回想】

ミード:「お前は筋がいい。きっと王国の支えとなる騎士となろう。」

 

【現在】

(教会の鐘の音とか、なんかこう物悲しい雰囲気)

エルダス:そう僕に語りかけてくださった騎士団長の葬儀が今日、行われた。

 

エルダス:彼は誰よりも強かった。対立する魔族軍を次々と制圧していく様は、歴代最強騎士とも謳われた。そして…彼は美しかった。眉目秀麗とはまさに彼の為にある言葉だ。その美しさは女のみならず、男達をも虜にし、魔族達も我がものとすべく彼を幾度も襲った。しかし彼は、いずれの求愛にも応える事は無かった。なぜなら彼は…。

 

【数ヶ月前】

ミード:「ハイデルはいるかな?」

エルダス:「ミード騎士団長!…すみません、兄は今、魔法石の仕入れに行っておりまして。」

ミード:「そうか。北の地で新たな採掘場が見つかったという報告があったが。なるほど…仕事熱心な事だ。エルダス、君も非番だったのだな。邪魔してすまなかった。」

エルダス:「いえ。…あの、よろしければ上がってお茶でもいかがでしょうか?朝市で良い香りのする茶葉を手に入れまして。…お時間があれば、なんですが。」

ミード:「私がいては君が休まらないのでは?」

エルダス:「そんな事はありません!むしろ…えっ、と。あの、父の話を…お聞かせいただけたらと。」

ミード:「…そうか、君が望むならば。」

 

エルダス:我が家は代々、騎士団直轄の武具職人を営んでいる。腕利きだった父が魔族に襲われ、命を落としてからは兄のハイデルがその跡を継いだ。僕は残念な事に、武具作りをするにはあまりにも手先が不器用過ぎた。悩んでいた時に、父の顧客であり友人でもあったミード騎士団長が、僕の身体能力の高さを見込んで、騎士団入りを進めてくれたのだ。

 

ミード:「良い香りだ…それに味も良い」

エルダス:「沢山買ったのでお一つ差し上げますよ。」

ミード:「いいのかね?では、いくらだったかな。」

エルダス:「お代なんてそんな!あの、いつもお世話になっているので…」

ミード:「すまないな、ありがとう。」

 

エルダス:きゅん…。ミード騎士団長の柔らかな笑顔が、胸を締め付ける。いつも厳しい顔でいるこの人が、こうして我が家に来た時にだけ見せてくれる表情。僕は昔からたまらなく好きだった。そしてその表情は、父の前では特に緩んだ。

 

ミード:「君の父は武具職人として一流だったが武道も強くてね。よく相手になってもらったものだ。剣では勝てても、組手で勝てた事はなかったよ。」

エルダス:「そうだったんですか。僕達の前ではふざけているだけの父だったので、凄く意外です。」

ミード:「あいつは二つの顔を持っていたからな。君達には父親としての顔しか見せていなかったのだろう。」

エルダス:「もう一つの顔とは?」

ミード:「今だから話せるが、君の父は職人として武具を作る一方、騎士達を監視する密偵だったのだ。」

エルダス:「そんな素振りは一度も…。では、今は兄が?」

ミード:「いや、ハイデルには引継がせていない。アイツにはもしもの時に対応できる腕があるからこそ頼んでいたのだ。君の兄は」

エルダス:「武道はからきしですからね。」 

ミード:「職人としては国イチだがな。」

エルダス:「今は別の方が?」

ミード:「…いや。適任者がいなくてね。私が長として目を光らせるのみだ。君の父には本当によく助けられたよ。…頼りにしていた。頼りに、していたんだ。」

 

エルダス:今、ミード騎士団長の瞳には父の姿が映っている。

 

エルダス:「ミード…騎士団長、もし、僕でお役に立てることがあれば、何でもおっしゃってください。父の代わりになれるなら…」

ミード:「ふふ…代わり、か。」

 

エルダス:あぁ、その顔は…ダメです、騎士団長。

 

ミード:「ハイデルは母親似だが…君は、父親によく似ているな。アイツと話しているようで、たまに調子が狂う。」

エルダス:「…どんな風に、狂うんですか?」

 

(椅子から立ち上がり、騎士団長の後ろへまわる)

 

エルダス:ミード騎士団長からはお茶と、彼自身の華やかな香りがする。

 

ミード:「…上官にする態度ではないな」

エルダス:「想い人にする態度ではあります」

ミード:「年長者をからかうのは良くないと教わらなかったかね?」

エルダス:「本気なので。」

ミード:「尚更タチが悪い。」

 

エルダス:でも彼は、僕を拒絶しようとはしなかった。今彼の瞳に映るのは、僕だ。

 

ミード:「君は、若い」

エルダス:「そうですね」

ミード:「…うっ」

エルダス:「あのお茶には少しだけ、催淫作用があるらしいんです。さっき見たら注意書きに書いてありました。」

ミード:「…少し、かね?」

エルダス:「個人差があるとも書いてありました。」

 

エルダス:彼の美しい顔が苦悶に歪む。意識が虚ろになる中、父の名を呼んでは僕の嫉妬心を煽る。王国最強の騎士の肢体は美しく隆起し、昂る程染まっていく。

 

ミード:「…ゆる、してくれ」

エルダス:「それは…父へ…?」

ミード:「…」

 

エルダス:キラキラと零れ落ちる涙は、彼の顔を装飾する宝石のようだった。

 

【現在】

エルダス:ミード騎士団長の遺体は、父と同じ場所で見つかった。全身切り刻まれていたが、頭部だけは綺麗なままだったそうだ。

 

ハイデル:「ミード騎士団長までやられるなんて…っ、その魔族…そんなに強いのか?」

エルダス:「…僕が、必ず倒す。」

ハイデル:「エルダス、お前までいなくなつたら…!」

エルダス:「これは僕がやらなきゃいけないんだ」

 

【回想】

ミード:「君達の父は私のせいで犠牲になったのだ…。」

エルダス:「貴方は魔族に襲われたのですね?」

ミード:「私を庇って…逝った。私さえいなければ…アイツは…」

エルダス:「父は貴方を守る事ができたんだ。あなたが生きている事を誰よりも喜んでいるはずですよ。」

ミード:「私は君達に恨まれても仕方ない男なのだ。」

エルダス:「だから僕を受け入れたんですか?…何それ、酷いや。僕は貴方の事を」

ミード:「許さないでくれ…」

エルダス:「愛している…」

​・・・おしまい・・・

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