『バラバラ宴会』
落語のように一人で演じていただいても楽しいと思います。
(林の中の御堂)
白 「知ってるかい?
あの神社の後ろの竹やぶでは、夜な夜な宴会が開かれているそうだよ。」
黒 「はて、また何で竹やぶで?御堂の中ならまだわかる。
なんでそんな野ざらしで宴会なんてやってるんだい。」
白 そりゃあんた、集まってくるのがヒトじゃないからさ。」
黒 「ヒトじゃないって、あぁ、なるほど…
あそこには大昔、獄門台があったと聞いた事がある…幽霊か。」
白 「御明答!そんでな、人数は四、五人。
飲んで歌って踊って騒いで、大騒ぎらしいよ。」
黒 「まァ、夜中に騒いでもあの辺は民家もねぇからな。
せいぜい寝床のカラスが迷惑するくらいだ。」
白 「そうなんだよ、カラス達が落ち着いて寝れやしないって、イライラしてるんだ。
イライラして日中ギャアギャア大騒ぎしてよ、人間達はそれで大迷惑よ。」
黒 「巡り巡って迷惑を被ってるわけか、人間様は。」
白 「そうそう、そういうこと。だから私たちに何とかしてちょうだいって。
さっき団子屋の弥生ちゃんがお参りに来たのさ。」
黒 「ふむ、弥生ちゃんがな。あの子にゃいつも団子をお供えして貰ってんだ、
俺達が一肌脱ぐしかねぇなぁ。」
(神社裏の竹やぶ。夜。)
白 「おうおう、盛り上がってんねぇ。」
黒 「見事に全員首が無ぇなあ。おぉい、お前ら楽しそうにやってるところ悪いんだが、
もちっと静かにしてくんねぇかなぁ?
ここでこんな風に騒がれたんじゃあ、カラス共が寝不足になっちまってよ。」
白 「カラスが寝不足になると、人間様にも迷惑が起きちゃうのよね。
お願いだから、他所に行ってくれないかなぁ?」
黒 「…あ?嫌だ??」
白 「なるほど、自分の首を探しに来たとな。」
黒 「あのなぁ、ここにはもうお前達の首はねぇんだよ。
皆どこぞの墓に入れられて、供養されちまったのさ。」
白 「頭が先に成仏しちまったわけだ。気の毒になぁ。
バラバラにされちゃったんだもんなぁ。」
黒 「酒や肴は御堂の供物か。ここの神さんはよく怒らなかったなァ。」
白 「…え、神様もあちこちに居場所があるから怒らないって?」
黒 「一つの神様を全国各地の神社で祀ってるからなぁ。
…ま、それはそれ。お前らは成仏しろい!」
✼✼✼ おわり ✼✼✼