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『あの時から初恋』
ねぇ、それ本気で言ってるの?冗談にしか聞こえないんだけど?
だって私たち知り合ってたった三日しか経ってないし。
…え?ずっと前から私の事、知ってた?…え、いつから?
…は!?十年前?そんなに前から!?なんで?そんなに私って有名人だった?
教育実習…え、えぇーっ!?あの時の!
覚えてる!めっちゃ質問に来てくれた子だ!
え、でも待って、苗字が…。
そ、そっか。それは大変だったわね…。
全然気付かなかった。だって雰囲気も全然違うから。
あの頃はあなた、牛乳瓶の底みたいな眼鏡かけて…え、牛乳瓶知らない?
あぁ、今は紙パックだものね。私達の頃の給食の牛乳は、瓶だったのよ。
そうそう、洗ってね。あれ蓋撮るの苦手だったのよねぇ。
爪を切った後なんか最悪…って通じないか、今の子には。
あぁ、何であの仕事辞めたのかって?
…色々あってね。
え、向いてた?ほんとに?…それは嬉しい。ありがと♡
まぁ、大変だったのよ…。キャパオーバーになっちゃって。今こんな感じぃ~。
タガが外れたっていうの?ビックリしたでしょ?
十年前から変わってたのは私も一緒。…幻滅した、よね。
え
ちょ、やめてよ。大人をからかわないの!…って、あなたももう大人か。
でもよく気付いたわね、私だって。
え…やだ、待ってよ、そういう事言われると。…なんだか悪いことしちゃったみたい。
そんな、真剣な目で見つめないで…!なれてないのよ、そういうの!
…もう。
じゃあ実らない初恋、実らせてみる?
*** おわり ***
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